採用企業インタビュー
発電ビジネスのグローバルリーディングカンパニーが、日本の電力市場のさらに先を指し示す未来像とは
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JAC Recruitment
- 代表取締役社長
- 松園 健
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シーメンス株式会社
- 代表取締役社長兼CEO
- 藤田 研一 氏
世界200カ国以上で事業を展開、ドイツ本社のグローバルメーカーであるシーメンス株式会社。日本での歴史も120年以上を重ね、近年注目のエネルギー事業でも目覚ましい躍進を見せています。今後2017年には都市ガスの小売全面自由化、2020年4月には大手電力会社の送配電部門を切り離す「発送電分離」をひかえ、ますます目が離せないエネルギー業界。その渦中にあるシーメンス社でエネルギービジネスを統括する藤田研一氏にインタビュー。JAC Recruitment 代表取締役社長の松園健が、業界の動向から同社の企業戦略、そして求められている人材までお聞きしました。
活気づくエネルギー業界のトレンドと、シーメンスが果たす重要な役割

代表取締役社長兼CEO
藤田 研一 氏
松 園: 御社は2015年10月にヘルスケア部門から分離し、新体制となりました。現在のシーメンス社で、藤田さんが統括するエネルギー関連事業は大きな柱のひとつです。原発事故も経て、凄いスピードで市場が変わっています。業界の流れをどう見ていますか。
藤田氏:
日本のエネルギー関連業界をひとことで言うと、変革、変化の時期です。2016年4月の電力の小売全面自由化からはじまり、2020年4月には大手電力会社の発送電分離が待っています。具体的に言うと、発電分野においては異業種参入が著しく、ガス、石油、製鉄、製紙など様々な業種の企業が入ってきています。
これまでの流れとしては、福島の原発事故のあと、しばらく業界は完全に止まっていました。自由化以前は電力会社が中心だったので、事業会社とすればアセットを使えるかどうかわからない状態で、新規投資などできない状況でした。それが自由化を契機に180度転換。新規投資の案件が増えるなか、新規参入が相次ぎ、あっという間に状況が変わりました。
今後自由化で変わるのは市場構造。自由化以前は、電気を販売できるのは電力会社のみでしたが、今では事業者として登録すれば誰でも販売できます。マーケット規模は20兆円ともいわれ、競争原理が働く市場が広がったので、さらに活性化していくでしょう。通信自由化の時もそうでしたが、良いことばかりではなく、多くの参入企業の中から自然淘汰されたり、吸収合併されたりという流れになる。売電する企業やIPP(独立発電事業者)やPPS(特定規模電気事業者)など、一部の発電業者は競争が激しくなると思います。ただ我々メーカーは数が限られているので、悪影響を受けるとは全く思っていません。むしろビジネスチャンスです。
松 園: 日本でもやっと電力の自由化が進み、電力会社ではない様々な企業が電気の販売を始めたということは、投資が拡大するのでメーカー側にとってはチャンスということですね。

代表取締役社長 松園 健
藤田氏:
はい。ただし手放しで喜んではいられません。拡大したマーケットの留意点は 競争原理が働くということ。儲けようとすると、各社発電コストをいかに抑えるかということになります。一般企業からすれば当たり前の話ですが、自由化前には競争が無かったので、業界的には画期的な出来事です。電力会社の料金は、総括原価方式で決まっていました。「これだけのお金を掛けて発電したので、料金はこれです」という方式。今後は競争力のない価格では、だれも購入しなくなる。最終消費者に売る値引きプランやマイレージサービスとの連携など、マーケットがどう変わるのか注目しています。
私は自由化前に、ビジネス誌のインタビューで「日本でもコーヒーショップで電気を買う時代が来る」とコメントしたことがありましたが、まさにそんな時代。どの業界でもそうですが、競争なので若干リスクもあり、自然淘汰されていくでしょう。発電事業者も多様化しているので、我々にとっては、やはりチャンスといえます。
松 園: なるほど。増えすぎたプレーヤーを見極める目利きが大事ですね。御社はドイツが本社ですが、すでにドイツでの電力自由化を経験した御社なら、様々なノウハウをお持ちなのでは?
藤田氏: ノウハウの蓄積は豊富にあります。ドイツでは1998年から電力事業が全面自由化されたので、それをもとにケーススタディを実施しました。シーメンスは世界200カ国以上に事業所を構えており、すでに電力自由化された先進国の事業も、すべて確認しています。日本での自由化の前に、電力会社の経営者の方へ説明をする機会がありましたが、ヨーロッパの電力会社は自由化でいかに苦境に陥ったか、事例を交えた話をして「方針はよく見定めた方がいいですよ」とアドバイスをさせていただきました。
松 園: グローバルスタンダードを知る先達として、製品やサービスだけではなく、ビジネスのノウハウまで提供しているということですね。
発電ビジネスのリーディングカンパニーとしての真価を日本で発揮

松 園: グローバルで約170年もの歴史をもつ御社が、その強みを活かすビジネスチャンスとして、現在は、海外で提供する電力と日本で提供する電力の需要、どちらが大きいですか。
藤田氏:
これまでも海外に電力を提供するお手伝いをしてきました。ODA、JICAなどの他に商社やEBC(駐日欧州商工会議所)などとも取引があります。需要については、あまり大差はありません。
一番大きなチャンスは、日本で電力を供給する業界自体がグローバルに近づいていること。そこでシーメンスの提案力が活かせます。日本における再生可能エネルギーは、一時太陽光発電の需要がグッと上がりましたが、いまは風力発電が伸びてきています。我々が得意とするのは、まさに風力発電で、1991年にデンマークに世界初の洋上風力発電所を建設して以来、洋上風力をリードしており、シェアで言えば世界の洋上風力の約70%を占めています。現在日本の風力発電の中心は陸上ですが、今度洋上も増えるでしょう。しかし日本で事業展開している風力メーカーは、洋上風力の経験についてはほとんどありません。そこに対してシーメンスは圧倒的に強いノウハウがある。発電所建設、メンテナンスについての知見を提供できます。
もうひとつの例は、発電所建設。通常、電力会社は社債で発電所を建てますが、いまSPC(特定目的会社)を作って新規プロジェクトとして発電所を作るという流れがあります。プロジェクトファイナンスという手法を使うとなると、資金調達の際に当然発電所も信頼性を問われます。銀行は動くかわからない発電所には資金を貸さないので、発電所の無駄を省いてコストを抑える必要があるだけでなく、発電するガスタービンの信頼性も問われます。新開発のタービンでは、実績がないと言われかねませんが、シーメンスの大型ガスタービンは10万時間以上稼働の実績があるから、安心していただけます。また、日本だけではなく、グローバルでどれだけ稼働しているかというのが、いま日本の中で重要視されています。国内市場でも、実はグローバルにおける実績が重要なファクターになります。
松 園: 世界の洋上風力発電の約70%を御社が占めているというのは凄いですね。時代も追い風になって、御社がグローバルで培った大きなアドバンテージを、日本が必要としている状況が生まれているのですね。
IoT、生産、メンテナンス、すべてにイノベーションを

松 園: 将来を見据えて、グローバルでは、どのようなイノベーションに取り組んでいますか。
藤田氏:
メーカーとして、我々は常にイノベーションを続けています。まず風力発電もガスタービンも、そのものが非常にイノベーティブです。例えばガスタービンの業界で熱から電気に変える効率を0.1%上げるというのはすごいこと。業界は、そこにしのぎを削っています。大型のガスタービンで0.1%効率を上げると、1万5000世帯分ほどの電気が出来てしまう。我々はR&D(Research & Development)に何千億円という投資をしています。素材の研究ではセラミックコーティングなど日進月歩。風力のタービンでも革新的な技術を開発しています。タービンのダイレクトドライブは普通はブレード、つまり翼が回り、ギアボックスでスピード調節して発電機に繋げています。対して当社の新型はブレードに直接マグネットで発電機がついている。そうするとメンテナンスが楽で、コントロールがしやすい。色々な意味でイノベーティブです。
もうひとつ大きな要素は、IoT(Internet of Things)。ビッグデータの活用を進めています。世界に約1万機ある当社の風力発電機はインターネットでつながり、その膨大なデータを日々、データアナリティクスセンターで解析しています。風力のセンターはデンマークに拠点があり、日本の風力発電のデータもデンマークに集約されて、リアルタイムで日本から見ることができます。ガスタービンも700台近くがつながっていて、現在はドイツとアメリカに拠点がありますが、今後、日本にも中継センターを作ろうとしています。そのデータ解析は、納品後の3つのフェーズに活かされています。
物はいつか故障します。まずフェーズ1は、故障した瞬間のデータを我々はすべてとっているので、蓄積した過去の事例データとの対比で、なぜ起こったのか原因解析ができます。
次のフェーズ2は、その原因解析を活かして、故障の前に予知すること。過去に我々の発電所やガスタービンで起こった問題の95%以上は、そのデータ分析で事前に予知できるようになっています。データ分析は母数が多いほど良く、我々は世界中のデータから、お客様に事前に予測をお伝えすることができます。
さらにフェーズ3は予防保全。一律の期間ですべてを定期点検するのではなく、実際の運転状況を把握することで、特に多く使用されている部品などは、先に点検を呼びかけるなどの予防保全ができます。
将来的にはお客様と一緒に発電所自身が持つデータ、例えば気候、温度なども併せれば、すごく大きな可能性があると思っています。電気の価格がいつ上がるか下がるかの予想もできる。例えば「暑い時は電気が売れるからフル稼働させよう。でも発電所の中でも気温が高い時に3号機はどうも効率が落ちる。じゃあ5号機をフル稼働しよう。」というように、効率のいい発電ができます。価格が高い時にはフル稼働させて、価格が落ちそうになったら抑制することも可能です。実際に、他社と合同で行ったアメリカの実証実験では、売上にして約2億円相当アップしたという話があります。そこまでいくと、IoTでさらにお客様の役に立つことができます。この研究は、シーメンスのアメリカ法人がやはり強いですね。
将来の水素社会におけるシーメンスのアドバンテージ

松 園: 話をお聞きしていると、エネルギー業界には国の政策が大きく関わっているのが分りますが、今後の国の政策を見据えた事業への展望をお聞かせください。
藤田氏:
例えば経済産業省には、水素社会の構想がありますが、日本は十分に可能性があると思います。例えばソーラーでも風力でも、発電所が多いところは人口が少ない場所が多い。だから電気の消費が少ないので送電線が弱く、電気の送電量が限られている。そこで大量の電気を送ろうとすると系統がもたないので、皮肉なことにクリーンなエネルギーを沢山作っても送れない。稼働率を無理に落として発電を減らす事態が一部で起こり始めています。そのため電気を別の媒体で運ぶことが必要になる。
そこで注目されているのが水素。電気を水素化して運べばいい。例えば風車が自然に回っていれば、いわば原価ゼロで電気が生まれます。電気の水素化にはまだお金がかかりますが、原価ゼロなら、ペイする可能性が大きい。当社の発電事業では、産業部門の水素化装置で水素化できます。水素を運んだ後、大型の化学プラントで生産に使ったり、水素を天然ガスと混焼させてガスタービンで発電するなど、サプライチェーンは多岐に渡りますが、当社は事業をまるごと担うことができます。さらに我々はFCV(燃料電池自動車)に関する技術も提供しています。
松 園: 卓越した技術とイノベーションで、すでに様々なソリューションを提供しているのですね。
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