- 株式会社中野鉄工所
- 代表取締役
- 中野隆次氏
- 幼少の頃より、後継ぎの修業として工場に出入りしていた中野氏。機械、道具類の改造・工夫を得意とし、今や「浪速のエジソン」と呼ばれる存在。業界に先んじて自転車のハブ製造のFA化を推進し、無人化ラインを完成させて業界の注目を浴びる。開発したエアハブは第1回ものづくり日本大賞特別賞を受賞。
ペダルを漕ぐだけでタイヤの空気圧が一定に保たれるという、奇跡とも言うべき自転車用エアハブを開発した中野鉄工所。そのエアハブにも改良を加え、車椅子用や変速機を内蔵したものなど、常に新しい価値を創造し続けている。中国とのコスト競争による廃業の危機をいかにして乗り越えたか、そして今後の展開について、同社の代表取締役である中野隆次氏に聞いた。
中国に進出した同業者が、次々と裸になって帰ってきた
― 業界をとりまく環境はいかがですか。
この不況で同業ではどこも売上の5割減6割減は当たり前ですね。回復に向かうまで少なくとも1年はかかるんではないでしょうか。でもね、そもそも自転車産業はもう十数年も前から中国に移っていますからね。
― 国内生産のピークは平成2年頃だったと聞いています。
その頃は国内のハブ(車輪の中心軸)の半分以上はここが作っていたんです。そこからだんだん中国の安い製品が入ってくるようになり、これはいずれ日本ではできなくなるな、と思いました。
せっかくナンバーワンになりましたけど、こればっかりはしょうがない。たとえハブを作れても、自転車本体を作るところが日本からなくなっていきましたからね。自分たち中国に出るしかないと。ところがね、それもそんな簡単ではなかったんです。
同業の仲間も、同じ時期に中国に出ていったんです。合弁会社を作って、機械も全部向こうに移してね。でもしばらくしたらみんな裸になって帰ってきた。行って1年2年のうちはいいけど、いずれノウハウが中国に学ばれてしまう、そうすると結局日本人はいらなくなってしまうんですよ。資金もつぎ込んで、機械を引き上げることもできないで、皆帰ってはきましたが、新たに何かを始められる状態ではなかったですね。
かといって、何もせずにただ会社が潰れるのを待つわけにもいかない。私たちにとって幸いだったのは、取引をした中国側の会社がハブを作ってなかったことなんです。その会社は香港に親会社があって、自転車のペダルを作っていたんですが、ハブの製造も始めたいと。それで、こちらの現状は向こうもよくわかっていて、製造ラインごと売ってくれと言ってきたんです。なるほど、わかった、売ろうと。機械だけあっても技術がないと動かせないんで、技術者もこちらから派遣して教えようと。ただし、ひとつ条件を出したんです。ここのラインで作ったハブには全てナカノのマークを入れてくれと。中国側も、自社よりナカノの方がブランドがあるからということでそれは歓迎だったんです。それで、できたハブをナカノブランドとして逆輸入することにしたんです。
ノウハウはいずれ学び取られる。だから常に新製品を作るしかない。
技術者の派遣を始めてもう3年になりますけど、ノウハウはいずれ真似られます。だから常に新製品を作るしかない。いずれにしても日本で量産は無理ですから、開発と試作は日本で、生産は中国で。そう割り切りました。
― そして生まれたのがこのエアハブ。まさに逆転の発想ですね。普通だったら、いかに空気の抜けないタイヤをつくろうかと考えそうなものですが。
空気の抜けないタイヤは10年前に一度世に出てるんですけどね。発泡を使って。以降、何度か試みられているんですが、結局乗り心地が悪くて普及してないんです。タイヤの転がりが違うし、発泡が抜けてくるとそれこそもう使えない。空気タイヤに勝るものはまだないんですね。というより、タイヤの空気圧というのは車にとって非常に大事な要素なんです。自動車でも燃費の良さが追求されていますが、エンジンの改良にも限界があるでしょう。それで今はタイヤの空気圧に目が付けられているんです。まだ成功していませんが、近いうちに自動車でも空気圧を一定に保つ仕組みが作られてくるでしょうね。
― このエアハブは今も改良が加え続けられているのでしょうか。
全ての自転車にエアハブを取り付けられるようにと思っていましてね。今開発中なのが、エアハブの中に変速機が入っているタイプです。変速機には外装タイプと内装タイプがありまして、外装はギアが外に出ているタイプですね、これはエアハブをつけるのは難しくないんです。内装の方は難しい。ハブ内の変速機の強度を保ったまま圧縮して、できた隙間にエアハブの機能を入れるわけですからね。いまやっと市場テストに入ったところですね。業務用自転車や電動自転車など過酷な使用状況に耐えられるかどうかを測っています。
突き当たってそれを破る、そうすると次の展開が生まれてくる
― 今後の展開についてお聞かせください。
エアハブの自転車以外への応用は考えています。車椅子用はもう出ていますしね。あとは空気を圧縮するコンプレッサー、これはいろいろと応用ができるのではないかなと思います。「空気」というのが今注目されていてですね、例えば空気を微小な泡に変えることで洗浄効果が生まれたりとか。そういう分野に何か応用できればいいですね。
中野鉄工所も続けていこうと思ったら、人も育てていかないといけませんね。今の若い技術者は図面はかけても組み立てられないとか、刃物の切れ味が感覚としてわからないとか、基礎的な部分が抜けていることが多い。今、新しい工場を建てている最中なんですが、これが落ち着いたら、現場である程度もの作りをやってきた人を採用して、育てていきたいと思っています。
― 最後に求職者へのエールをお願いします。
職探しもあきらめたらあかん。もの作りも一緒ですけど。執念で突き詰める。突き当たってそれを破る、そうすると次の展開が生まれてくるんです。壁は分厚いと思いますけど、あきらめずに根気よく。そういう熱意は採用する側にもきっと伝わるし、それだけがんばって入った会社だったら、より頑張ろうと思えますしね。
会社概要
| 社名 | 株式会社 中野鉄工所 |
|---|---|
| 本社所在地 |
大阪府堺市美原区木材通2-1-9 TEL:072-362-5550 E-Mail:info@nakano-iw.co.jp |
| 代表者 | 代表取締役社長:中野 隆次 |
| 設立 | 1954年5月 |
| 事業内容 |
|
| 資本金 | 6,000万円 |
| 従業員数 | 8名 |
| ホームページ | http://www.nakano-iw.co.jp/ |


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